財産分与に関して

財産分与とは、夫婦が結婚期間中に築き上げた財産を、分け合うことです。

対象になる財産

(1)財産分与の対象となる財産について

婚姻中に築かれた財産には

  1. 特有財産(遺産など、結婚生活に関係なく一方が所有する財産)

  2. 共有財産(共有名義の不動産など、夫婦の共有財産)

  3. 実質的共有財産(名義は一方であるが、実質的に夫婦で協力して取得した財産)

  4. 不明なもの

があります。

これらの財産のうち、財産分与の対象となるのは、②、③、④になります。
については、共有財産と推定(762条2項)されます。)
ただし、についても、特有財産の減少防止に配偶者の協力があった場合、例外的に一部につき財産分与の対象とすることがあります。

夫名義の借地上に店舗を運営していたが、夫が入院した期間、妻が店をきりもりし、家計を支え、借地権を維持したという事案につき、借地権の価格の一部につき、財産分与を認めた。
(東京高判昭和55年12月16日判タ437号151頁)

(2)具体的な対象財産について

財産分与の対象となる具体的財産としては家、車、退職金、株、生命保険の返戻金、貯金、借地権 等多種多様な財産が対象になります。

時々、夫婦のどちらの名義でもない財産ではあるが、結婚生活中に築かれた財産は分割の対象にならないのでしょうかという質問があります。
具体例をあげれば、会社名義の財産や、配偶者の実家の稼業の財産です。この点、原則として会社は法人として別人格で財産を所有しているので、財産分与義務者の財産とはみなされず、財産分与の対象とはなりません。しかし、例外的に、実態が個人経営である場合は(法人格否認等)、財産分与の対象となりえます。
さらに、配偶者の実家の稼業の財産についても、無償或いは相応の報酬を貰わずに従事していた場合は、財産分与の対象になることがあります。但し、これらの場合は、名義的には夫婦と関係ない第三者のものなので、夫から金銭的な精算としてもらうしかない点に注意が必要です。

(3)配偶者が別居時に持ち出してしまった財産について

持ち出した財産については、財産分与の先取りをしていることになります。
したがって、持ち出した額については、既に分与を受けている以上、財産分与の請求は当然に認められません。では、分与相当額を超える分与対象財産を持ち出した場合は、どうなるのでしょう。これについては、持ち出した方に対して、余分に持ち出した分の金銭の返還(分与)をするよう命じた判決があります(東京高裁判平成7年4月27日家月48巻4号24頁)
また、持ち出した額が財産分与相当額を「著しく」超えるような場合や、持ち出しの対応が悪質であった場合など、特段の事情が認められる場合には、不法行為になってしまうこともあります。

分割の割合

少し座学的な話になってしまいますが、分割の割合を決めるための考え方に、

  1. 清算的財産分与

  2. 扶養的財産分与

  3. 慰謝料的財産分与

という考え方があります。

①清算的財産分与とは、共に築いてきた財産は、財産への貢献度(寄与度と言います)
に応じて分け合いましょうという考え方です。
専業主婦(夫)についても、現在では半分の分与を認めるのが原則となっています。「うちの主婦(夫)は、家事をしょっちゅうさぼっていたし、家事のいくつかは私も良くやらされていたんだけど……」という方もいるかもしれません。この点については、法制審議会で「各当事者の寄与(貢献)の程度は、その異なることが明らかでないときは、ふさわしいものとする。」とされてしまっているので、家事をさぼっていたということを明らかにしていくことで、相手の財産分与額を正当な額に近づけていくことができるのです。

②扶養的財産分与とは、夫婦の一方が離婚により、生活水準を「著しく」落とすような場合に、離婚後の生活保障と言う意味を与えるため、財産分与を一定程度扶養の必要な方に優遇するというものです。その金額は、婚姻期間、有責の有無・程度、夫婦の収入、年齢、子の養育、疾病・身体ないし精神障害等から判断されます。
なお、これは、相手が再婚や死亡により扶養がいらなくなる時までをカバーしなくてはいけないわけではありません。
あくまでも、扶養が必要な方が安定した収入を得るまでの一時的手当にすぎないのです。

③慰謝料的財産分与は、財産分与をするときに、離婚原因のある相手への責任追及(慰謝料)的な意味をもたせるものです。
但し、慰謝料は別途請求することができてしまうので、慰謝料の取得を二重に認めるわけにはいきません。
そこで、慰謝料的な意味で財産分与額を優遇させるような場合は、慰謝が財産分与額を優遇させることで全部完了したのか、一部にすぎないのかは、明確にしなくてはいけません。財産分与で慰謝料全部が賄われた場合、改めて慰謝料請求をすることはできません。
長々と説明しましたが、要するに、財産分与が認められるのは、原則半分です(清算的意味の財産分与)。しかし、離婚することで、著しく生活状況が悪化してしまう場合は少し色を付けることができます(扶養的意味の財産分与)。
また、離婚原因を相手が作った場合にも、少し色を付けて財産分与請求ができるのです。(慰謝料的意味の財産分与)

財産分与は相手の財産や共有財産の調査、計算、双方の譲れない財産についての交渉など、離婚の中でも特に、負担の大きな手続きです。
離婚時の財産分与についてお困りの際は、弁護士法人萩原総合法律事務所(茨城県筑西市・常総市・ひたちなか市)にご相談ください。

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