離婚と子どもに関して

親権者が決まらないのですが、離婚だけ先にできますか。
できません。未成年者の親権者は、離婚に際して必ず決めなくてはいけません。
離婚協議中の相手と少しでも早く関わりをなくしたいです。親権は後からでも変更できると聞いたので、とにかく離婚だけでも成立させてしまって大丈夫でしょうか。
民法上親権者の変更規定はあります(民法819条6項)。
しかし、親権者の変更は容易にできるものではありません。離婚交渉中に相手との接触を避ける方法等も含めて、一度弁護士に相談されることをお勧めします。
親権について争っています。調停や裁判では、どのような点を見て、親権者を判断していますか。
子どもの福祉の観点で、総合的事情を考慮して考えられます。
具体的には以下の点です。
  1. 環境の継続性

    子どもは、一定の年齢を超えると、子ども独自のコミュニティを地域社会に持っています。
    したがって、子どもをあちこちに移動させるのは、子どもが築き上げた環境を崩してしまうので、あまり良くないと考えられています。
    そのため、現実に子を養育監護している状態が優先されることもあります。
    現に子を監護していない親が親権を取る場合もありますが、ケースとして決して多いとは言えません。

  2. 監護に向けた状況

    親がただ親権を欲しがっているだけでなく、しっかりと子どもを監護できる基盤を整えているかも、チェックされます。
    経済状況、資産状況、居住環境、家庭環境などが判断材料になります。
    過去・現在・未来の三つの視点から、自分が子供にどれほど関わってきたかを整理してみてください。
    整理例として、子供が生まれてからの世話(おむつ替え、お風呂、着替え、食事等)、保育園の送り迎え、小学校のイベントの参加等でどのように関わってきたか、現在の関わり方はどうかの整理、現在の生活サイクル表を作って、今後も子供と過ごす時間を適切に取れるかの検討、将来の子供の就学をかなえるために、貯金をしていけるかどうかの検討等が必要になってきます。
    調停委員や裁判官を納得させられる資料の準備をしましょう。

  3. 子の意思の尊重

    15歳以上の未成年の子についてはその意思を尊重します。
    また、15歳以下の未成年者についても、意思表明が出来る子については、子の意思が尊重されます。
    子の意思については、調査官という、子どもの心理を学んだプロの人間が聞き取りを行います。
    親権が欲しいあまり、相手の悪口を子どもに吹き込む等して、子どもの意思を操作しないようにしましょう。
    子どもにとっては、相手は何者にも代えがたい「親」です。あなたが思っている以上に、傷ついてしまいます。

  4. 兄弟姉妹関係の尊重

    血のつながった兄弟姉妹を分離することは、子の人格形成に深刻な影響を及ぼすことがあるため、兄弟姉妹の関係は尊重されます。

  5. 親族の協力

    一人親で子育てをする場合、どうしても仕事と家事を両立させるために、子どもを常に監護し続けるのは困難です。実家の両親や兄弟姉妹に思い切って連絡をして、協力を得られないか聞いてみることも重要です。
    どうしても親族を頼るのが難しい場合は、付近に子どもを預かってくれる施設が無いか探してみるなど、監護環境(2)を整えていきましょう。

  6. 子供に対する愛情と、養育の意思

    愛情と意思があることは大前提です。
    などです。

親権者にならなかったですし、子供と面会する気もありません。養育費は払わなくてはいけませんか。
養育費は、親の子に対する扶養義務に基づき払わなくてはいけない金額です。
親権者にならなかったとしても、扶養義務は残りますし、子供と面会することの対価として払われる金額でもないので、養育費の支払い義務は残ります。
現実的に支払える金額について、相手方と交渉をして合意を目指すことをお勧めします。
合意が成立しない場合は、裁判所で算定表を基準にして養育費を決定して貰うことが可能です。

https://www.courts.go.jp/tokyo-f/saiban/tetuzuki/youikuhi_santei_hyou/

養育費は子どもがいくつくらいになるまで払うもの(貰えるもの)なのでしょうか。
養育費は「子どもが社会人として自立するまで」の費用です。
そこで、通常、訴訟や審判になる場合には、成年に達する日の属する月までと決められることが多いです。
しかし、現在では子どもが大学へ進学することも珍しくありません。
したがって、親の資力、学歴、社会的地位などから通常、その子どもが高校卒業以上の高等教育を受ける家庭環境であると判断される場合には、大学進学の扶養料も発生することがあります。
判例では、医師や教員の父親に、大学卒業時までの扶養料の支払い義務を認めた裁判例があります(大阪高判平成2年8月7日家月43巻1号119頁、東京家審昭和50年7月15日家月28巻8号62頁)。
離婚する際、財産分与として家を貰う代わりに、養育費を放棄する合意をしました。しかし、家計がどうしても苦しくて養育費が必要です。放棄した養育費を請求しなおすことはできますか。
養育費は子どもが親から扶養を受ける権利として請求できるものなので、権利者は子ども自身です。
親が子どもの権利を勝手に放棄することはできないので、このような場合でも、子ども自身が請求をおこなうことで、養育費を請求することは可能です。
しかし、「放棄します」との約束は、子どもと親の関係に影響を及ぼさないものの、元夫婦の関係の両者には影響があります。
従って、合意の仕方によっては、一方親が子どもから請求を受けて支払った養育費を、他方親に対して求償請求していくことも十分考えられます。
とはいえ、合意後に事情が変更している場合もあり得ますので、当事者間で納得のもと合意内容を変更させることに問題はありません。
また、場合によっては、裁判所で合意の取消変更ができる場合もあります(札幌高裁昭和51年5月31日判タ336号191頁)。
相手が養育費を支払わなくなることが心配です。一括で支払って貰うことはできますか。
養育費は、子どもの成長段階に必要な監護養育の需要を満たすために支払われるものなので、特別な事情が無い限り、一括払いではなく定期金払いの方法で支払われます。
特別な事情としては、長期間にわたって確実な履行が期待できない場合を言います。
例:義務者が外国籍で、帰国を予定している場合等(長崎家審昭和55年1月24日家月34巻2号164頁)
(※一括払いの場合、贈与税の課税対象となることがあります。)
過去の養育費の支払いは請求できますか。
原則出来ません。請求時点以降の養育費の支払いしか受けることができません。
ただし、『養育費の支払義務は、本人(子)が要扶養(要監護養育)状態にあり、義務者たる相手方に支払い能力があれば支払義務が存在し、裁判所は裁量により相当と認める範囲で過去に遡った養育料の支払いを命じることができる』とした審判例もあり、過去の養育費の支払いを認めた事案もあります(東京高裁昭和58年4月28日決定。家裁月報36巻6号42頁)。
養育費を払っていたのですが、今度再婚をすることになりました。再婚相手との間には子供がいて、今後その子どもの養育に費用が掛かってきます。養育費を減らしてもらうことはできますか。
病気、家計状況の変化、仕事の変更、再婚などにより、今までの養育費と同額での支払いが困難になることがあります。
そんなときは、まずは合意で養育費の増減を決めることができればベストですが、協議が整わない場合は、家庭裁判所の調停・審判の申立てをして、養育費の額を決めなおしてもらうことが可能です。
なお、逆の事情で、養育費を貰っていた人が、仕事の変更、病気等で生活費が不足するようになったときにも、養育費増額請求を行うことが可能です。
相手から暴力を受けていました。子どもにとっては良い親でしたので、子供と相手が会うことには同意しているのですが、一緒に立ち会うことは怖くてできません。何か方法はありますか。
NPO団体等で、面会交流の支援をしてくれる団体があります。
しかし、茨城に拠点を置く公益社団法人や民間機関は、当職が探した限りでは、現在のところ存在していません。
とはいえ、東京の施設によっては、ある程度柔軟な対応をしてくれるところもあるようです。(※このような支援機関も、あくまでもサポート機関です。将来的には自立した面会交流をめざし、同居親・別居親・子どもがそれぞれ頑張って行かなくてはいけないことに、変わりはありません。)
養育費や慰謝料を十分に払ってこない相手に、子供を会わせたくないのですが。
お気持ちは非常によく分かります。養育費や慰謝料は、子供と新しい生活を建てなおしていく上で、非常に重要なお金ですし、それを支払わない相手に子供と接する資格は無いとの気持ちになってしまうのも、無理はありません。
しかし、子供にとって何が一番重要か、改めて考えて下さい。
責任を果たさない納得のいかない相手でも、子供にとっては唯一の親です。
子供は同居親に気を使い、本心を隠して別居親との交流を望まない発言をすることもありますが、本心では、別居親が自分に対する愛情を無くしてしまったのではないか等々、大きな不安を抱えていることが多々あります。
離婚はあくまでも夫婦の問題ですが、子どもはそれを上手く割り切れず、お父さん(或いはお母さん)が出て行ったのは、自分に問題があったせいかもしれないと考えてしまいます。
離婚が子どもには責任が無いことだということを、理解してもらうためにも、面会交流には積極的になって頂ければと思います。
養育費や慰謝料に関する問題は、面会交流とは別の問題として、弁護士とよく相談し、回収見込み等を検討して頂ければと思います。
離婚後、私の苗字は旧来の苗字に変わりました。子の親権は私が取れたのですが、子の苗字は自動的に変わるのですか。
自動的には変わりません。
離婚後、旧来の苗字での貴方を筆頭者とする戸籍を作成し、「子の氏の変更許可申立」を裁判所で行って下さい。
裁判所で許可書が交付されますので、それを持って市役所に行けば、貴方を筆頭者とする戸籍に、子の戸籍が異動され、子の苗字があなたと同じ苗字に変更されます。

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