離婚とお金に関して

離婚に備えて別居したいのですが、引越し費用は相手から貰えますか。
原則もらえません。
話し合いによっては、財産分与の前払い、慰謝料等の名目で引越し費用を得られる場合もあります。
離婚するときには、お金の問題について、相手と何を話し合うべきでしょう。
一般的に、離婚時に取り決めるべきお金の問題としては、大きく分けて
1.生活費(婚姻費用、養育費)、2.財産分与、3.慰謝料、4.年金分割があります。
生活費はいくらもらえますか。
夫婦の相互の収入や、子供をどちらが何人世話しているか、同居の有無、離婚前か離婚後か等の事情によって変わってきます。
  1. まず、離婚前に貰える生活費のことを婚姻費用と言います。

    婚姻費用は、自分の生活費と、未成熟子(経済的に自立していない子)の生活費を請求できます。
    夫婦で話し合って金額を決められない場合、裁判所で決めて貰えます。
    裁判所では、算定表に基づいて金額を決めます。

    (参照:https://www.courts.go.jp/tokyo-f/saiban/tetuzuki/youikuhi_santei_hyou/

  2. 次に、離婚後に貰える生活費のことを養育費と言います。

    離婚後のものなので、夫婦の互いの扶助義務は無くなっているため、自分の生活費は請求できません。請求できるのは、自分が世話をしている未成熟子の生活費です。
    夫婦で話し合って金額を決められない場合、裁判所で決めて貰えます。
    やはり、上述した算定表に基づいて金額は決められます。

過去、もらえなかった分の生活費(婚姻費用、養育費)を払ってもらうことはできますか。
原則として認められません。
婚姻費用、養育費は請求時以降のものが貰えます。
ただし、『養育費の支払義務は、本人(子)が要扶養(要監護養育)状態にあり、義務者たる相手方に支払い能力があれば支払義務が存在し、裁判所は裁量により相当と認める範囲で過去に遡った養育料の支払いを命じることができる』と解した審判例もあり、過去の養育費の支払いを認めた事案もあります(東京高裁昭和58年4月28日決定。家裁月報36巻6号42頁)。
財産分与として相手から貰えるものは、どのようなものですか。
結婚期間中(同居して生活が一体であった期間中)に、夫婦二人で築き上げた財産が、財産分与の対象となります。
相手から貰えるだけでなく、自分名義の財産も分け与えなくてはいけません。
また、未成熟子名義の財産に関しても、実質夫婦二人で築き上げた財産であれば、財産分与の対象となります。
不動産(土地、建物)、車、保険の解約返戻金、預金債権(銀行等の預金)、証券等が対象になります。
ここに挙げたのは一例ですので、気になる財産があれば、一度弁護士事務所にご相談ください。
結婚前に貯めた貯金や、親から生前贈与を受けた不動産は、離婚した時に相手に分け与えなくてはならないのですか。
財産分与の対象にならない可能性があります。
財産分与の対象になる財産は、夫婦二人で築き上げた財産です。同居期間中に互いが稼いだ給料で購入した不動産や貯金等が対象となります。
それに対して、相続した財産や、結婚前の貯金は、夫婦二人で協力して生活していたから築けた財産とはいえません。
従って、それらの財産は、特有財産といって、原則的には財産分与の対象にはなりません。
ただし、特有財産が減少しなかったのは、他方配偶者が生活を協力していたからである等の例外的事情が認められた場合、特有財産についても財産分与の対象に認められた事例があります。
夫名義の借地上に店舗を運営していたが、夫が入院した期間、妻が店をきりもりし、家計を支え、借地権を維持したという事案につき、借地権の価格の一部につき、財産分与を認めた。(東京高判昭和55年12月16日判タ437号151頁)
会社経営をしているのですが、会社の資産も財産分与の対象になりますか。
原則、なりません。
会社は法人格があり、離婚した当事者とは別人格と考えられるため、会社の資産は離婚時財産分与の対象にはなりません。
但し、実態が個人経営で、会社と個人が同一視できるなど、法人格が否認される場合等例外的に財産分与の対象になることもあります。
配偶者が、別居の際に財産を持ち出したのですが、それは財産分与したものと考えて良いのでしょうか。
財産分与の一部先払いと出来る場合もあります。
また、持ち出した金額が財産分与額を著しく超える場合や持ち出しの対応が悪質な場合などは、特段の事情が認められる場合、不法行為責任を問いうる場合もあります。
慰謝料はどのような場合にもらえますか。
慰謝料とは、違法性のある行為(配偶者の不貞行為や暴力等)により、離婚を余儀なくされたことに対する損害賠償金のことをいいます。
したがって、相手から違法性のある行為があって、それが理由で離婚することになった場合に、慰謝料が発生します。
代表的な違法性のある行為としては、犯罪行為(暴力)や貞操義務違反(浮気)があります。受け取る人によって良いとも悪いとも意見が分かれるもの(例えば性格の不一致)等は、慰謝料請求原因にはなりません。
慰謝料としてもらえる金額はいくらくらいですか。
慰謝料の平均的な請求額は300万円~500万円です。
そのうち、認容される額は平均的に300万円以下となっております。
但し、これも事案によりけりです。もっと低く、数十万という場合もありますし、高くなる場合もあります。
慰謝料額は、大きく分けて1.有責性、2.婚姻期間、3.相手の資力の三つから算定基準が考慮されていると言われています。
  1. 有責性では、例えば浮気に至った原因が誰にあるのかが等が問題になります。
  2. 婚姻期間では、結婚期間が長いほど離婚になるダメージは大きいと考えられて、対応する慰謝料の額も高くなると考えられています。
  3. そして、スポーツ選手等、高額収入の方の場合は、慰謝料も高額で認められる可能性があります。
    類似判例等から検討が必要になりますので、弁護士事務所に相談されることをお勧めします。
相手が離婚に関するお金を払わないとき、どのような回収方法がありますか。
1.履行勧告、2.支払い督促、3.強制執行等の手続きが考えられます。
  1. は、裁判所から相手に支払いを促す制度です。個人でも申立を行えますが、家庭裁判所で決めた調停や審判の取り決めがあることが前提です。また、支払いを強制する力はありません。
  2. も裁判所を通して督促を行う手続きです。相手方が異議を述べると、通常の訴訟手続きに移行します。
  3. は相手の給料等から取り立てることができる手続きです。調停調書、審判書、判決書、強制執行受諾文言付き公正証書が前提として必要になる他、必要書類があります。また、申立書の記載も個人で行うには少し難しいものですので、弁護士に相談されることをお勧めします。

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